タイではどこにでも寺院がある。
この街も例外ではなく、ワット・ハート・ヤイ・ナイという寝釈迦を奉った寺院がある。
そこまで行くために、トクトクと交渉する。
この街のトクトクは、バンコックとは違って軽自動車の荷台である。
日本の軽自動車の荷台に幌を付けて、両側にベンチを設えたのが、この街のトクトクだ。
ソンテオと言うべきだろうが、決まった路線を持っているわけではなく、客の要望に応じて何処へでも行く。
日本の軽自動車だから、トクトクのように騒々しくない。
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夜景は素晴らしい市場だが |
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悪臭漂う生鮮食品売場あたり |
たぶん現地の人はトクトクとは言わずに、実際には名前も違うのだろう。
運転席には奥さんを乗せていたり、友達を乗せていたりと、気楽な稼業に見える。
たくさんのトクトクが街をながしており、すぐにつかまえることができる。
もちろん値段は交渉だ。
行き先をいうと金額を言ってくるから、その半額から7掛けくらいでまとまることが多い。
7掛けなら断られることはないが、それでも外人値段ではあるだろう。
ワット・ハート・ヤイ・ナイも日本人から見れば、他と同じ普通の寺院である。
ボクたちには寝釈迦の違いなど判らない。
朝早いこともあって、まだ人が少ない。
寝釈迦の下にも入れる。
売店になっており、占いをやっているのだろうか、坊さんもいる。
有難い土産物を買えといっているらしいが、買いたいような物はない。
朝の境内地をノンビリと散策していると、犬や猫がよってくる。
徐々に参詣客も増えてきた。
男女のカップルが、花や線香をあげたり仏様に金箔を貼っている。
広い中庭では、トクトクの運転手さんが、ノンビリと待ってくれる。
また市中まで運んでくれるのだ。
昨日はすでに閉まっていた時計台近くの市場まで送ってもらう。
この市場はとても大きく、広い道路から奥の道路を越えて、3棟も連なっていた。
道路側は衣類など、真ん中は雑貨、一番奥は食品である。
手前の2棟は2階建てで、奥の建物とは道路をまたいだ通路でつながっている。
展示されている商品は、アジアならどこでも見るようなもので、これといった特徴はない。
ただイスラム系の人が多く、衣類にしても食事にしても、タイ風からは風合いがかなり離れている。
奥へと進み、道路に出る。
ここからは食品売場である。
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どのマネキンも表情がおかしい |
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アジアの臭いには慣れているつもりだが、この食品売場は凄まじい臭いである。
野菜を売っている周辺はともかくとして、肉や魚を売っている周辺は、下水の臭いと混じって立っているのも辛いくらいである。
他の市場ではこれほどの悪臭は感じなかったから、ここだけ問題だろう。
この街の人々はここで買っているのだろうから、この街で食事をするのは気が重くなった。
熱い日差しの中を、屋台街へと南下する。
夕べは店が閉まっていたので、寂しい街だったが、昼間になると多くの人や車が走っている。
街を歩いているだけだが、この街はなにか棘があるような感じがする。
タイ人は優しいにもかかわらず、この街の人々の眼差しが優しくない。
バンコックのような大都会ですら、ゆるい感じがするのに、この街はギスギスしてキビシイ感じなのだ。
異教徒の住む国境が近い。
イスラムの影響だろうか。
この食材はあの市場で買ったのだろうかと思いながら、昼ご飯を食べる。
今まで考えてもみなかったことだ。
あの市場を見てしまったので不安になる。
火が通っていれば、地元の人が食べていれば、まあ大丈夫だろうと納得させる。
食後もまたぶらぶらと歩く。
小さな街なので、取り立て行くところもない。
街中で盤上遊戯に興じる姿もない。
誰も遊んでいないテーブルが、道端に置かれているだけである。
仕方なしに駅へと向かう。
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