ホアランポーン駅の前には広場があったように覚えていたが、とりたてて広場というほどの場所はなかった。
物売りのオバサンもいなくなっていた。
地下鉄の工事中だったが、地形は変わっていないのだろうから、ボクの思い違いなのだろう。
記憶は怪しいものだ。
しかし、ホアランポーン駅がちょっと寂しく見えた。
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ホアランポーン駅の中央ホール |
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停まってしまった列車の車窓から |
駅の中に入ってみると、ホールはかつての面影どおり。
汚れ方といい、むかしの上野駅のようだ。
窓口でドンムアンまでの切符を買う。
隣では白人バックパッカーが、チェンマイ行きの列車がキャンセルになったと説明されている。
これが悪い予兆だったのだろうか。
左側のホームへと進むと、列車はすでに入線していた。
車掌さんに切符を見せると、この列車だと頷いてくれる。
物売りが車内の通路から降りると、列車は12時50分の定刻に出発した。
座席はチラホラといった感じで、乗客は多くはない。
毎度のことながら、車窓からは赤茶けたトタンと、洗濯物がみえる。
貧しげな家が軒を連ねている。
ドンムアンまでは30分位だろうと、安心して座っていた。
ホアランポーンから離れるにしたがって、貧しい家並みを抜け郊外の風景になった。
バンコクの市内だけではなく、郊外にも超高層の建物が建ち始めている。
高速道路も整備されつつある。
鈍い列車は車に追い越されていく。
ゆっくりとでも走っていれば着くと高をくくっていたが、なぜか列車は停まってしまった。
車内放送で何か案内をしているらしい。
残念ながらタイ語が分からない。
三戸祐子の名著「定刻発車」を持ちだすまでもなく、日本の列車が時間に正確なことは世界でも例外で、どこの国でも多くは多少遅れるものだ。
飛行機の出発時間には間があるし、しばらくは落ち着いていた。
なかなか動きださない。
少し動いてはまた停まる。
とうとう30分以上も停まったままになってしまった。
このまま動かなかったらと、ちょっと不安になってきた。
しかし、動きだしてくれた。
ドンムアンには1時間近く遅れて到着した。
その間、乗客たちは何の変化も見せず、動揺した風でもなかった。
たぶん、列車が遅れることには慣れているのだろう。
ドンムアンについてみると、空港の建物には昔日の面影はない。
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イスラム教徒のための礼拝室 |
というか、かつてもこうだったのだろうか。
スワンナプーナ飛行場と比べるせいか、零落した施設の様子は見るも無惨である。
ドンムアン駅のホームから、跨線橋で飛行場へとつながっている。
跨線橋へと登るスロープの鉄部は錆が浮きでているし、天井からは仕上げ材が垂れ下がっている。
かつてはこんなじゃなかったはずだと思いながら歩く。
スロープは途中で折り返して跨線橋へとつながり、左へ行くと飛行場、右へ行くとホテルである。
もちろん左へと進む。やや薄暗い。
跨線橋から空港の建物へと入るが、くすんだ感じで埃っぽい。
ピカピカのスワンナプーナ飛行場とは大きな違いである。
3階の出発階へとエスカレーターで登る。
イスラム教徒のための礼拝室がある。
仏教国にこんなものを造らせてしまうイスラム教の力は恐ろしい。
近くにいた航空会社の女性にカウンターの番号を聞くと、自動チェックインの機械へと案内し操作してくれた。
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