ソイ33通りを500メートルくらい歩いた。
目の前にある立派なロータス・スクムヴィット・ホテルのドアボーイに聞くと、コンパクト・スクムヴィット・ホテルはすぐ先の左だという。
ほんとうに近いよ、といった感じ。
安心して歩き始める。
しかし、見当たらない。
それらしきホテルがない。
歩き続けると、やがて繁華街が切れて静かな住宅地になった。
そして、T字路にでて突きあたってしまった。
ソイ33通りはここで終わりである。
予約したホテルが見つからない。
どこで見落としたのだろう。
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ソイ33通り |
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コンパクト・スクムヴィット・ホテル |
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怪しげな日本語の看板 |
仕方なく来た道を引き返すが、それらしき建物はない。
あれだろうか、と高い建物を見あげる。
近所のお店で聞くが、コンパクト・スクムヴィット・ホテルはどこか? というボクの質問にに首をかしげる。
知らないという。
えー!!!
地元の人が知らない。
ボクは沈黙してしまった。
その時である。
滑らかな日本語で、アッそこを入った左だという声がする。
その店の客の中に、日本人の男性がいた。
近所の料理店で働いているのだとか。
彼の教えに従って、駐車場のような坂を登る。
コの字型に中庭を取り囲む大きな建物である。
マンションかと思って通りすぎてしまっていた。
ニャンニャン マッサージという怪しげな日本語の看板を見ながら、中庭をなお奥に進む。
左手奥に、やっとコンパクト・スクムヴィット・ホテルを発見した。
薄暗くなって日が暮れる頃、なんとかホテルに到着した。
あたりの雰囲気からボロいホテルを想像していたが、予想に反して清潔そうなホテルで一安心。
と思って、ガラスのドアを押した。
暗い。
やっと着いたというのに、フロントがボンヤリとしか見えない。
薄暗いロビーに、暗澹たる気持ち。
ドッと落ちこんだ。
フロントのカウンターにはロウソクが置いてある。
停電だった。
さっきの雨で停電となったのだろう。
フロントに座っている女性は、停電に驚いた様子もない。
にこやかな笑顔で迎えてくれる。
ロウソクの灯りでチェックイン。
ここにサインしろと紙を示されるが、暗くて読めない。
非常用照明の下へと移動して、やっと判読できた。
フロントの彼女は笑っている。
わずかに非常照明のともる廊下を、荷物を背負って部屋に向かう。
屋の扉を開けると薄暗い。
部屋の真ん中に大きなベッドがある。
広さは充分だが窓がない。
またドドッと落ちこんでしまった。
何しろ、扉を閉じると真っ暗なのだ。
握ると充電されて電気のつく懐中電灯が枕元にある。
ここはラブホテルではないか、と疑いたくなった。
しかし、他に行く当てもない。
落ちこんでいても始まらないので、夕食を食べに表へとでることにする。
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