香 港 再 訪  
2007.11.15−記
第1日目 香港の飛行場にて 香港島のトラム
第2日目 飲茶のあとは郊外へ 高層アパート群と上海蟹
第3日目 中国本土の境界へ ペニンシュラ・ホテルと
第4日目 もう帰国か! 雨中居のトップに戻る


第1日目   香港の飛行場にて  


 2000年の中国の雲南・広州旅行以来、7年ぶりに国外にでた。
身体が復調しているか小手調べに、近場で返還後の香港へいった。
なんと今回は、お目付役が同行している。
1997年に、香港がイギリスから中国に返還されて、今年でちょうど10年目である。

 前回の香港旅行は1989年だったから、18年ぶりの香港である。
新しい飛行場、飛行場とダウンタウンを結ぶ高速鉄道などなど、見たいものはたくさんある。
なかでも最も見たかったのは、返還がおよぼした影響だった。

 返還の影響は後述するとして、もっとも大きな変化は、日本人観光客が少なくなっていたことだった。

搭乗口へと向かう人が見える
 成田でキャシィ・パシッフィクのCX501にのる。
とても空いており、空席だらけ。
空いているからではないが、キャシィ・パシッフィクから、かつての栄光が感じられなくなっていた。なぜだろう?

 4時間20分の飛行で、香港国際空港に到着。
広い飛行場、設計が新しいせいか、何となく未来的で便利にできている。
1階が到着階で、3階が出発階である。

 到着階と出発階を分離する原則がみごとに貫徹されている。
横への移動はやや長い感じがするが、導線が単純化されているので、実にわかりやすい。
エスカレーターやエレベーターを使わない計画は、なかなか難しい設計なのだ。
よく消化されている。

 到着階の歩く舗道を歩きながら、上をみると天井のスリットから、反対側へと移動する人が見える。
これが映画のようで、とても動感的である。
ノーマン・ フォスターが設計したこの空港は、立体としての上下階の捉え方が、日本人にはまねのできない空間感覚である。

 歩く舗道の終点が、イミグレーションになっており、そのまま入国手続きになる。
日本人は問題なく通過。出たところがバッゲ・ジクレームで、預けた荷物がでてくる。

 荷物をとって税関を通過する。
税関の職員は他の仕事をしているようで、入国者にはまったく興味がないようだ。
何の注意も払おうとはしない。
成田の厳しさとは、まったく違う。
大きな荷物を引きずった人も、おしゃべりしながらのんびりと通過する。

 全体にゆったりとした空港だが、税関を通過するところだけは、ちょっと狭くなって人の流れを制御している。
税関を出たところには、飛行場からの高速鉄道の切符売り場、それに銀行と並んでいる。
香港市民たちは、黙ってその前を通りすぎるが、ボクには両方とも有用、立ち寄った。

いちばん左の機械がオクトパス読みとり機

 高速鉄道のパス(オクトパス)を買う。
片道と3日間地下鉄乗り放題の$220と、往復と3日間地下鉄乗り放題の$300の2種類ある。
いずれも出国時に返してくれる$50の保証金が含まれている。
ここでは現金で購入できず、クレジット・カードでだけ購入できる。
$1は15円くらい。

 オクトパスとはスイカのようなものだ。
香港ではセントの単位がいきているので、小銭がたくさん必要になる。
しかし、オクトパスを使えば、小銭は不要にな り、とても便利。
このオクトパスは、地下鉄を初めとして路面電車(=トラム)からミニバスにいたるまで、ほとんどの交通機関で使える。

 飛行場で購入したオクトパスには、高速鉄道以外には一銭も入っていない。
現金を補充しないと、他の機関では使えない。
補充機はいたるところにある。
補充機は$50紙幣と$100紙幣だけを受け付けるようだ。
バスなどは1乗り$5程度だから、長距離の電車にでも乗らなければ、$50の補充で充分だった。

 切符売り場をとおりすぎると、銀行がみえるが、銀行の手前で外へ出られる。
ボクは持っていた中国通貨の元をここで両替した。
途上国の飛行場には、多くの客引きがたむろしているのが常だが、客引きが1人もいない香港は、イタリアなどよりはるかに先進国である。

 オクトパス売り場と、銀行のあいだの出口をでると、広場のようになっている。
反対側はもう高速鉄道のホームである。
飛行機を降りてから、ここまで上下階を移動することはない。
旅人は1階に到着し、同じ階を移動して、そのまま電車に乗れるのだ。
つまり、街の中心部まで、誰の手も借りずに、車椅子に乗ったまま到達できる。
バリアー・フリーどころではない。
一切凹凸がない。
この平面計画には感動した。

 高速鉄道は全部が自由席。
12分間隔で運転されており、予約も不要。
設計があたらしく、室内もよくできている。
成田エキスプレスと違って、始発駅と終点を行ったり来たりだから、構造が簡単なせいもあるのだろう。
乗客にわかりやすい。

 誰にでもわかりやすく作れば、案内人や客引きなど不要になる。
案内人が必要だということは、空港の設計が下手なのだ。
途上国では人件費が安く、案内人も 大勢おきやすい。
そのうえ、金持ちしか空港を利用しないから、誰にでもわかりやすく作る必要がないのだろう。

 誰にでもわかりやすく、誰にでも使いやすくすることは、人権意識の発達した先進国でしか、生まれない発想なのかも知れない。
たしかに、誰にでもという発想が、先進国のものだ。
偉い人は並ぶ必要すらない。
特別な人だけに便宜をはかるのが、コネやツテがものをいう途上国の我が国だろう。

 特別な人脈などなくても、当人の言っていることに斬新さがあれば、誰でもが興味を持つのが開かれた先進社会だ。
身体障害者でも自由に歩けるようにするに は、お金がかかる。
お金がかかっても、誰でもが自由に歩ける社会を作ってこそ、全員の人権が大切にされている社会だ。

 人口が多い途上国では、利権を金持ちだけで独占しても、人材には不自由しない。
少子化に向かう先進国では全員が戦闘員でなければ、のびる生産性を支えられな い。
人間が少ないから、全員の人権を大事にしたほうが、社会の生産性は上がる。
だから、全員の人権が同じように扱われる。

 一般的にいって、途上国では街が騒々しい。
人はそれを活気があるというが、後進性のあらわれでもある。
先進国のプライバシー意識は、騒音の発生を抑制 し、静かな空間を求めるのだろう。
クールな香港国際空港は、期待していた以上に優れたできだった。

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