香 港 再 訪  
2007.11.15−記
第1日目 香港の飛行場にて 香港島のトラム
第2日目 飲茶のあとは郊外へ 高層アパート群と上海蟹
第3日目 中国本土の境界へ ペニンシュラ・ホテルと
第4日目 もう帰国か! 雨中居のトップに戻る


第3日目   中国本土の境界へ  


 朝の香港は、やはり飲茶だろう。
お目付役が友人から紹介された陸羽茶室にいく。
この飲茶屋さんはガイド・ブックにもでているほどの有名店である。
陸羽茶室の店内

 陸羽茶室はセントラルにあるので、香港島へと地下鉄に乗る。
セントラルに着いて、大通りを越えて歩く。
ガイド・ブックには、セントラルのD2出口から3分と書いてあるが、なかなか見つからない。
何人かに聞いて、やっとたどり着いた。

 入り口のドアが、重厚な木製である。
クラシカルなたたずまいの店で、昔の雰囲気が残っている。
ここは昔ながらの駅弁スタイルが売り物らしい。
オバサンがベルトで飲茶をいれた箱を首からさげている。

 オバサンは何やら叫びながら、各テーブルをまわる。
客はオバサンの箱から、飲茶の中身を確認して注文する。
すると、オバサンがテーブルに置いてくれるという仕組みである。
でもこのスタイルは、10時までらしい。
10時を過ぎると、紙でオーダーするシステムに変わる。

 お茶がでる。
コッポイといってみるが、ないとの返事。
申しわけありません、切らしています、と言うのではない。
「ない」である。
またポーレイにする。
オバサンから2・3品とる。
しばらくすると、隣りのテーブルに客が来た。
する と彼等は、入念に食器洗いを始めた。
まだ古い習慣が残っており、ここは本当にクラシカルなのだ。

 ところで味のほうだが、あまりお薦めできない。
どれも繊細さに欠け、単純な味で、決して美味いとは言いかねる。
値段も安くはない。
ガイドブックだよりの観光客向けの店である。
ここにはレトロな店構えと、駅弁スタイルの売り子さんを見るために、行けばいいのだろう。

 今日は中国本土との境界地帯にいく。
地下鉄で、セントラルから尖沙咀に戻る。
ここで九廣東鐵に乗り換えたい。
しかし、九廣東鐵の駅は少し離れている。
しかも駅の名前も、尖東駅で違う。地下道をてくてくと歩く。

 尖東駅は九廣東鐵の始発駅である。
羅湖(ロウー)行きと落馬州行きの電車が、羅湖行き2、落馬州行き1の割合で、5〜10分間隔ででている。
来た電車は、アート・キャンペーン参加車両らしく、派手なボディペイントの施されたビックリ物だった。

 電車はすぐに地上にでて、田園地帯を進む。
海側とちがって、こちらにはあまり開発が進んでいないのだろうか。
大規模な建物は少なく、ときどきあらわれる都市部が見えるだけだ。
ベッド・タウンといった感じ。

 日曜なので、地元の人たちが、どこかに遊びに行くのだろう。
2人の子供を連れた男女が、とても仲良さそうにお喋りしている。
じゃれ合っているといったほうが良い。
電車中で、家族が楽しげにふるまっているのは、最近の我が国では見ることが少ない風景である。

 お父さんもお母さんも、子供を愛して、大切しにしていることが、ひしひしと伝わってくる。
楽しげな風景を見ていると、こちらの心も豊かになってくる。
たぶん、香港では核家族が充分に機能しており、いまだ家族内暴力など少ないのだろう。

 電車は羅湖につく。
全員が下車。
全員がホームをぞろぞろと前のほうへとすすむ。
担ぎ屋のオバサンが足早に進む。
同じ中国国内でありながら、国境越えである。
しかし、ボクはパスポートをホテルに忘れたので、我々はここから先へは進めない。

 国境警備のためだろう、駅には警察官がいる。
この近辺を散策したいのだがというと、警察官は血相を変えて、そんなことは出来ないと言う。
たしかに地図の上でも、香港と本土とのあいだは、幅3キロくらいが立入禁止区域なっている。
以前は国境近くまで行けたのにと、すごすごと引き下がる。

 香港へ戻るために、ホームへの階段を上る。
戻る列車にのるには、別の改札を通る必要があるらしい。
上階のコンコースは、本土から来た人たちがたむろしていた。
なんとそこにはスターバックス・コーヒー店があった。

 スタバでコーヒーを飲みながら、しかし、ここまで来て、と心残りである。
そこで、九廣東鐵で上水へと一駅戻り、もう一つの国境の街、落馬州にいくことにする。
落馬州とは、羅湖より5キロほど西にある国境の街である。

落馬州の駅から中国本土を見る

 上水から落馬州にむけて、列車は地下にはいる。
ほぼ全線地下といった感じで、線路が新しいので、最近できたようだ。
上水と落馬州のあいだは、我が国で発行された地図にも、鉄道線が敷かれていない。
落馬州の駅も真新しかった。

 落馬州の開発は新しいせいか、まだ馴染まれていないらしく、人影がまばらである。
川を挟んだ向こうが本土で、大きなビルが建ち並んでいる。
落馬州の駅舎は香港の建物というより、中国の建物といった感じで、実に大まかなスケールである。

 公共的な建築では、返還前に設計された建物と、返還後の建物では違うのだろうか。
ノーマン・フォスター設計の国際空港などにも学んでいるようだが、全体を見る目がちょっとちがう。 

 列車が発着するのは3階以上の高さで、下にはバスの発着所が小さく見える。
外部階段の設えが大胆である。
バスの行き先は、きのう行った元朗と書かれている。
昨日行っていなければ、あのバスに乗っても良いが、今日はむしろ東のほうに行こうと思う。

 警備の女性に、戻るホームへと案内される。
また、上水に戻る。
上水で大埔へ行くバスを探すがない。
九廣東鐵で大埔処までいって、そこでバスに乗れといわれる。
しかたない。また電車に乗る。
大埔処にはバスがたくさんいた。
大埔の大美督行きのバスに乗る。

 大美督は、大きな淡水湖に面しており、風光明媚な場所として、香港人の遊び場になっているらしい。
小舟やウィンド・サーフィンが浮かんでいる。
バス停と海のあいだは、バーベキュー・ガーデンになっている。

 炭火を使っているのは、日本と同じだが、焼き方が違う。
鉄板や網を使わない。
先が2股になった鉄のハシに、焼くべき具をさしている。
それを手に持って火 にかざすのだ。
それぞれが自分用のハシを火にかざしている。
個人個人が参加できて、あれはあれで良いかもと思う。

 サイクリングロードがまわり、家族連れなどがのんびりと遊んでいる。
これを見ていると、香港はすでに先進国なのだ、と思う。
しかし、我が国とはちょっと違う感じがする。
我が国の人 が着ている衣類は、どれも生地が良く縫製がしっかりしている。
それにたいして、香港の人たちの衣類は、まだちょっと見劣りする。

 さまざまな分野で、いまや香港は存在感を高めている。
反対に、我が国は情報社会にのりきれずに、先進国間の競争に、負けつつあるように感じる。
彼我が逆転することがないと良いのだが、と思いながら、ゆったりした景色を眺めている。

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