朝の香港は、やはり飲茶だろう。
お目付役が友人から紹介された陸羽茶室にいく。
この飲茶屋さんはガイド・ブックにもでているほどの有名店である。
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陸羽茶室の店内 |
陸羽茶室はセントラルにあるので、香港島へと地下鉄に乗る。
セントラルに着いて、大通りを越えて歩く。
ガイド・ブックには、セントラルのD2出口から3分と書いてあるが、なかなか見つからない。
何人かに聞いて、やっとたどり着いた。
入り口のドアが、重厚な木製である。
クラシカルなたたずまいの店で、昔の雰囲気が残っている。
ここは昔ながらの駅弁スタイルが売り物らしい。
オバサンがベルトで飲茶をいれた箱を首からさげている。
オバサンは何やら叫びながら、各テーブルをまわる。
客はオバサンの箱から、飲茶の中身を確認して注文する。
すると、オバサンがテーブルに置いてくれるという仕組みである。
でもこのスタイルは、10時までらしい。
10時を過ぎると、紙でオーダーするシステムに変わる。
お茶がでる。
コッポイといってみるが、ないとの返事。
申しわけありません、切らしています、と言うのではない。
「ない」である。
またポーレイにする。
オバサンから2・3品とる。
しばらくすると、隣りのテーブルに客が来た。
する と彼等は、入念に食器洗いを始めた。
まだ古い習慣が残っており、ここは本当にクラシカルなのだ。
ところで味のほうだが、あまりお薦めできない。
どれも繊細さに欠け、単純な味で、決して美味いとは言いかねる。
値段も安くはない。
ガイドブックだよりの観光客向けの店である。
ここにはレトロな店構えと、駅弁スタイルの売り子さんを見るために、行けばいいのだろう。
今日は中国本土との境界地帯にいく。
地下鉄で、セントラルから尖沙咀に戻る。
ここで九廣東鐵に乗り換えたい。
しかし、九廣東鐵の駅は少し離れている。
しかも駅の名前も、尖東駅で違う。地下道をてくてくと歩く。
尖東駅は九廣東鐵の始発駅である。
羅湖(ロウー)行きと落馬州行きの電車が、羅湖行き2、落馬州行き1の割合で、5〜10分間隔ででている。
来た電車は、アート・キャンペーン参加車両らしく、派手なボディペイントの施されたビックリ物だった。
電車はすぐに地上にでて、田園地帯を進む。
海側とちがって、こちらにはあまり開発が進んでいないのだろうか。
大規模な建物は少なく、ときどきあらわれる都市部が見えるだけだ。
ベッド・タウンといった感じ。
日曜なので、地元の人たちが、どこかに遊びに行くのだろう。
2人の子供を連れた男女が、とても仲良さそうにお喋りしている。
じゃれ合っているといったほうが良い。
電車中で、家族が楽しげにふるまっているのは、最近の我が国では見ることが少ない風景である。
お父さんもお母さんも、子供を愛して、大切しにしていることが、ひしひしと伝わってくる。
楽しげな風景を見ていると、こちらの心も豊かになってくる。
たぶん、香港では核家族が充分に機能しており、いまだ家族内暴力など少ないのだろう。
電車は羅湖につく。
全員が下車。
全員がホームをぞろぞろと前のほうへとすすむ。
担ぎ屋のオバサンが足早に進む。
同じ中国国内でありながら、国境越えである。
しかし、ボクはパスポートをホテルに忘れたので、我々はここから先へは進めない。
国境警備のためだろう、駅には警察官がいる。
この近辺を散策したいのだがというと、警察官は血相を変えて、そんなことは出来ないと言う。
たしかに地図の上でも、香港と本土とのあいだは、幅3キロくらいが立入禁止区域なっている。
以前は国境近くまで行けたのにと、すごすごと引き下がる。
香港へ戻るために、ホームへの階段を上る。
戻る列車にのるには、別の改札を通る必要があるらしい。
上階のコンコースは、本土から来た人たちがたむろしていた。
なんとそこにはスターバックス・コーヒー店があった。
スタバでコーヒーを飲みながら、しかし、ここまで来て、と心残りである。
そこで、九廣東鐵で上水へと一駅戻り、もう一つの国境の街、落馬州にいくことにする。
落馬州とは、羅湖より5キロほど西にある国境の街である。
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落馬州の駅から中国本土を見る |
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上水から落馬州にむけて、列車は地下にはいる。
ほぼ全線地下といった感じで、線路が新しいので、最近できたようだ。
上水と落馬州のあいだは、我が国で発行された地図にも、鉄道線が敷かれていない。
落馬州の駅も真新しかった。
落馬州の開発は新しいせいか、まだ馴染まれていないらしく、人影がまばらである。
川を挟んだ向こうが本土で、大きなビルが建ち並んでいる。
落馬州の駅舎は香港の建物というより、中国の建物といった感じで、実に大まかなスケールである。
公共的な建築では、返還前に設計された建物と、返還後の建物では違うのだろうか。
ノーマン・フォスター設計の国際空港などにも学んでいるようだが、全体を見る目がちょっとちがう。
列車が発着するのは3階以上の高さで、下にはバスの発着所が小さく見える。
外部階段の設えが大胆である。
バスの行き先は、きのう行った元朗と書かれている。
昨日行っていなければ、あのバスに乗っても良いが、今日はむしろ東のほうに行こうと思う。
警備の女性に、戻るホームへと案内される。
また、上水に戻る。
上水で大埔へ行くバスを探すがない。
九廣東鐵で大埔処までいって、そこでバスに乗れといわれる。
しかたない。また電車に乗る。
大埔処にはバスがたくさんいた。
大埔の大美督行きのバスに乗る。
大美督は、大きな淡水湖に面しており、風光明媚な場所として、香港人の遊び場になっているらしい。
小舟やウィンド・サーフィンが浮かんでいる。
バス停と海のあいだは、バーベキュー・ガーデンになっている。
炭火を使っているのは、日本と同じだが、焼き方が違う。
鉄板や網を使わない。
先が2股になった鉄のハシに、焼くべき具をさしている。
それを手に持って火 にかざすのだ。
それぞれが自分用のハシを火にかざしている。
個人個人が参加できて、あれはあれで良いかもと思う。
サイクリングロードがまわり、家族連れなどがのんびりと遊んでいる。
これを見ていると、香港はすでに先進国なのだ、と思う。
しかし、我が国とはちょっと違う感じがする。
我が国の人 が着ている衣類は、どれも生地が良く縫製がしっかりしている。
それにたいして、香港の人たちの衣類は、まだちょっと見劣りする。
さまざまな分野で、いまや香港は存在感を高めている。
反対に、我が国は情報社会にのりきれずに、先進国間の競争に、負けつつあるように感じる。
彼我が逆転することがないと良いのだが、と思いながら、ゆったりした景色を眺めている。
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