香 港 再 訪  
2007.11.15−記
第1日目 香港の飛行場にて 香港島のトラム
第2日目 飲茶のあとは郊外へ 高層アパート群と上海蟹
第3日目 中国本土の境界へ ペニンシュラ・ホテルと
第4日目 もう帰国か! 雨中居のトップに戻る


第2日目   高層アパート群と上海蟹  


 元朗に戻り、流浮山(ラウファウサン)に行こうと、バス停を探す。
こんどは簡単に見つかる。
バスは、船に積み込むコンテナーがうずたかく積まれている、奇妙な風景の中を走る。
それに車の修理屋さんが目立つ。
なんだかちょっと昔の日本か、東南アジアの田舎に戻ったようだ。


 流浮山に到着。
バス停にはなにもない。
しかし、漁をしている村らしく、バス停に隣接して鮮魚店が並んだ小道が、海まで続いている。
生け簀のなかで魚が泳ぎ、お客に食べられるのを待っている。
そこで注文した物を、すぐに料理してくれるのだ。

 時間がずれているので、休憩時間らしい。
のんびりしている。
シャッターを下ろした店もある。
ガラス越しの雀荘では、女性たちが卓を囲んでいる。
店を冷やかしながら、海まで行く。
蛎の殻をむいている人にであう。
地元の人がその場で買っている。

 ずいぶんと大きな蛎である。
残念ながら、その場で食べるというわけにはいかない。
帰り道、貝柱の乾物や、蛎の薫製を買う。
臭いが、他の荷物にも染みつきそう。
後で判ったが、ここの値段は、市内で買う半額以下だった。

 天水團駅にいこうと、ミニバスに乗る。
終点だからと安心していると、天水團駅への看板を過ぎて、どんどんと遠くへいってしまう。
このバスは、天水團のマンション村に行くらしい。
終点だと言われたが、困った。
近くにはそれらしき駅はない。

 運転手さんに地図を見せると、うなずいてくれた。
帰りのコースの途中で、ここだと言って下ろされたところは、天水團駅の近くといえば近いが、といった場所だった。
あたりは高級マンション村らしく、フェンスがつらなり、門扉には電気錠が付いている。

 香港では超高層のアパートが林立している。
これらにはどのくらいの人が、住んでいるのだろうか。
ちょっと数えてみる。1階あたり、8〜10世帯くらいだ ろうか。
すると、1階あたり30人程度。
それが40階建てだから、1棟のアパートには、なんと1200人がすんでいるのか。

 古いアパートからは、洗濯物が直角に干されており、時代の風物が見える。
新しい建物は、さすがにきれいである。
おなじデザインの建物が、4〜5棟まとまって立っている例が多いから、ひとまとまりで5000人くらいが住んでいることになる。

 5000人が住んでいるのか、と考えると、何だか気が遠くなった。
しかも、見渡す限り、同じような高層アパートの群である
。高層アパートで育ってくると、どんな感性になるのだろうか。
布団が飛んで、なんて事故はないだろうか。
通勤時はラッシュで大変だなとか、排水設備はどうなっているのだろうなど、と りとめもなく思いめぐらす。

 そんなことを考えながら、フェンスに沿って歩くと、天水團駅についた。
駅前にある稲毛屋のようなショッピング・センターにはいる。
高校生くらいだろう か。
地元の若い人で一杯。
ここから屯門(テュンムン)フェリー・ターミナルまで、さっき見た九廣軽鐵という路面電車みなたいものに乗る。

 この路面電車、なかなかに優れものである。
あと何分で電車がくるかが、案内板に表示される。
しかも、行き先別に表示され、とても便利。
もちろんオクトパスが使え、車内ではなく、ホームに入るときにタッチする。
降りるときも、ホームから出るときにタッチ。
やろうとおもえば、無賃乗車はいとも簡単。

 ふつうの電車は登坂力がないものだが、この電車は急勾配もがんがん上る。
とんでもない急カーブも、らくらくと曲がる。
そのうえ、路面電車とは思えないスピードを出す。
それでいながら、線路が平面交差している、と驚きの連続である。
多くは1両運転だが、2台・3台連結もある。

 乗り換えて、屯門フェリー・ターミナル駅に着く。
終点である。
この電車は、バックしない。
すべての客を降ろすと、ループ状の線路を一回転してくる。
先頭が先頭のまま、もと来た線路を走っていくのだ。
だから、この電車には片側にしか乗降口がない。

 屯門フェリー・ターミナルから、セントラルまでフェリーで行くつもりだった。
しかし、フェリーは廃止されていた。
残念無念。
40階建てのアパートが林立した街なかで、天を仰いだ。
セントラルへは297番のバスだと教えられて、すごすごとバス停に向かう。

 2階建てのバスが来たので、とうぜんに2階にしかも、いちばん前の席に乗る。
バスは街なかをくるくると回って客をひろう。
そして、日が暮れた街なかをあとに、2階建てのバスは高速道路に入り、セントラルへと走り出した。   

 飛行場のある大?島(ランタオ島)を右手に見ながら、バスは順調に走る。
つぎつぎに繰り広げられる風景は、高層アパートの群と、貿易用だろうか海岸の建物である。
九龍半島と大?島をむすぶ橋に、一列のネオンが輝いており、なかなかにお洒落。

 九龍と香港島をむすぶ橋は、大きくしかも高い。
2階バスは空中を走るように、左に湾曲しながらセントラルへと向かう。
首都高速とよく似た道路だ。
セントラルの市街にはいる。
見慣れた景色。
しかし、セントラルで降りそこねてしまった。

 バスはなおも市街地を走る。
ここらで降りないと、ますますセントラルから離れてしまう、と心配し始める。
しかし、次は終点だった。
金鐘(アドミラル)と いう地下鉄の駅だった。
尖沙咀へ帰るのは、ここでもOKで、金鐘はセントラルと尖沙咀のあいだの駅である。

 すでに7時過ぎ。
夕食の時間だが、どこにしよう。
上海蟹の季節だし、やはり海鮮料理だろう。
飲茶のうまかった鴻星酒家へ行ってみよう。朝行ったので、顔を覚えているかも知れない。
とすれば、親切なサービスが期待できる。

 尖沙咀駅で地下鉄を下車。
勝手知った店、意気揚々と、鴻星酒家の階段を上る。
店にはいると、驚いたことに、凄まじい熱気が渦巻いていた。
朝はテーブルが置かれていなかった通路にまで、びっちりとテーブルが並び、人々が食べ物に食らいついている。

 食べるというような上品な表現ではあたらない。
美味いものを、少しでも口に運ぼうと、あちこちで蟹と格闘しているのだ。
鋏、耳かきの親分のようなスプーン、それに手にはビニールの手袋。
お皿の上には、食べ終わった蟹の殻が山盛り。


 当然のことながら、満席である。
断られるかと思ったが、ちょっと待っていろという仕草。
5分もしないうちに、テーブルに案内される。
蟹を蒸すテーブルのわきを通過。
蟹がうずたかく積まれている。

 テーブルにつくや、まず蟹を注文する。
店員さんも、蟹の注文が正しい、といった対応である。
あと2・3品をたのむ。それにブルー・ガールというビールを 注文する。
お皿のうえに、鋏・大耳かきと手袋がおかれる。
わくわくしながら、料理の到着を待つ。

 ビニールの手袋をしていても、蟹のトゲが痛い。
そんなことはかまわずに、蟹に鋏を入れる。
この鋏がすばらしく切れる。
大耳かきで蟹の身をほじくり出す。
蟹とは思えない、こってりした味。
味噌から足から、ていねいにほじくりだして、無言で口に運ぶ。

 蟹との一戦が終わると、フィンガー・ボールがでてきた。
ビニールの手袋が薄いので、蟹のトゲがビニールを貫通してしまい、指先に蟹が付いてしまうのだ。
昔はビニールの手袋などでなかったのだろうが、まだちょっと改良の余地がありそうだ。
20年物の紹興酒をちょっと飲む。
蟹戦争には、大満足だった。

 他の料理が運ばれてくる頃に、やっとあたり注意がいくようになった。
すると、となりの部屋では麻雀をやっている。
パイをかき混ぜる音が、じゃらじゃらと聞こえてくる。
いかにもの中国の食堂状況である。
満腹。

 お目付役がデザートを食べたいとのたまった。
しかも友人から推薦された牛乳プリンが食べたいのだという。
地下鉄でとなりの佐敦(ジョーダン)駅まで行 く。
地上にでるが、方向が判らない。
近所のビルのガードマンに聞くと、すぐ裏だという。
そのビルを突き抜けると、めざす牛乳プリン屋はあった。

 もはや食べる物はいらない。
ネーザンロードを冷やかしなら、尖沙咀まで歩く。
土曜の夜だからだろうか、夜遅くなっても人通りが絶えない。
何も買い物はせずに、第2日目はおわった。

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