ジャンピー     原作・脚本  匠 雅音
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S:100 神田啓介の自宅前。西川良太は、呼び鈴を押す。
女の声  はい、どちらさまですか?
西川良太  西川です。
女の声  どうぞ。
西川良太、門を明けて中へはいる。
S:101 神田啓介の自宅の一室。
西川良太  神田さん。これ。
神田啓介  なんだこれは?
西川良太  明日、ガサ入れなんですよ。
神田啓介  容疑は?
西川良太  外為法違反です。
神田啓介  で、これは?
西川良太  プログラムとデーターのCDを、駅前のコインロッカーに避難させてあります。その鍵です。
神田啓介  わかった。
西川良太  お願いします。自分は、これから事務所へ戻りますから。
拳銃を出して
西川良太  これもお願いします。
神田啓介  ああ、よし。
S:102  ○○コーポレーションへ、ガサ入れ。ピンポン。
西川良太  どちらさんですか?
若刑事2  宅急便です。

西川良太、扉を開ける。老刑事、ドアに靴を差し込む。
老刑事  外為法違反容疑で、強制捜査する。
西川良太は入れまいと、抵抗しようとする。
小松原章  いれてやれ。
老刑事  久しぶりだな。小松原。
小松原章  まじめな会社に、なんで強制捜査なんですか?
老刑事  最近じゃ、やくざも賢くなったな、コンピューターなんぞ使いおって。
小松原章  だから、何なんですか、今日は?
捜査員が、コンピューターに張りつく。捜査令状を見せる。
若刑事2  いけしゃーしゃーとしやがって。
老刑事  銀行から、ちょっと金がなくなったのよ。おまえさんとこじゃないかと思ってな。
小松原章  うちは、まじめな会社なんですよ。なにもでてきませんよ。
西川良太は、切り出し小刀をもてあそんでいる。
老刑事  おい、銃刀法違反で来て貰おうか。
西川良太  えー! これが!
小松原章  いってこい。すぐだしてやっから。
若刑事2が、西川良太を逮捕し、部屋から連れ出す。

小松原章  刑事さん、コンピューターがわかるのかね?
老刑事  小松原、おまえはどうなんだ。
小松原章  ふっ…。楽しい世の中になりますよ、刑事さん。もう、ドスやヤッパの時代じゃないですから。
S:103  大野陽子のアパートの近く、路上にて、森光太郎と小松原章が遭遇する。
小松原章  またあったな。 プロが素人に脅されるってことはないんだよ。図体のでかい素人さん。
けっ。意気地なしのうすのろが。
小松原章は、馬鹿にする。森光太郎、きれる。
小松原章  プロが、どんなもんだか教えてやるぜ。
小松原章は、拳銃を出そうとする。
森光太郎は、すばやく小松原章に近づき、投げつけ、当て身を食らわせる。
S:104  深夜。走る車から見える前方の風景が、ヘッドライトに照らされる。草とか潅木しか見えない。
車が止まる。
S:105  ワンボックス型バンの後部荷室の床の上に、小松原章が、針金で縛り上げられた上、猿ぐつわをはめられている。
天井から、火のついたロウソクが下がっている。
ロウソクの光だけで、暗い。
森光太郎  気がついたか。
小松原章  ううう。
森光太郎  こうなると、プロも哀れだな。
ガソリンの入ったポリタンクを持ち上げて、嬉しそうな顔をする。
小松原章  ううう。
森光太郎  これが、なんだかわかるか?
ガソリンだよ。
俺を馬鹿にしたプロに、俺のやり方を教えてやるよ。
ポリタンクにナイフで小さな穴を開け、ガソリンを少しづつ小松原章の体に降り懸かるようにする。
森光太郎 いい臭いだろう。 意気地なしのうすのろじゃないぜ、俺は。
今、わからせてやる。
 森光太郎の眼が異常になっている。ロウソクを吊るした紐を、ゆっくりと下げる。小松原章は、恐怖で顔をひきつらせる。
ロウソクの紐を再度引き上げ、ポリタンクに結びつける。
ポリタンクはまだ少しガソリンが残っているが、ロウソクの重みで持ち上がりかかる。
ガソリンが減るに従って、ロウソクが下り始める。
森光太郎  じゃあな。
森光太郎は、そっと扉をしめて、歩き去る。背後で、バンが燃え上がる。

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