ジャンピー     原作・脚本  匠 雅音
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S:87 電車のなか。そこそこに込んでおり、二人は立っている。息切れは納まらない。
林 哲也  靴ははくのものですよ。
大野陽子、あわてて、靴をはく。しかし、ストッキングはずたずた。ストキングを引っ張るが、あきらめる。パンティーストッキングを脱ごうとするが、林哲也にとめられる。
林 哲也  こんなところで。
大野陽子、舌を出す。
大野陽子  だめか。
林 哲也  あたりまえですよ。
大野陽子  でも、どうして私の家が判ったんだろう。
林 哲也  職場へ、電話が掛かるくらいだから、自宅だって判っているんでしょう。
大野陽子  電話の声の感じは、まるで違うわ。別人みたいよ。
林 哲也  仲間は何人もいるのさ。
大野陽子  なら、なぜ、最初から職場へ来ないの? 私の職場が判っているんなら、 今ごろ、アパートの前でなんか待ち伏せしないで、会社の帰りでも襲え ばいいじゃない。
林 哲也  そういわれれば、そうだな。初めから、職場に電話をかけてきたんだか らね。
しばしの沈黙
大野陽子  (林哲也と同時に)電話と、あいつらは別なんだ。
林 哲也  じゃまだ、あいつらは、大野さんの職場をつかんでないんだ。会社は安全地帯か。
S:88  キオスクで、大野陽子、ストッキングを買う。それをもって、大野陽子は、トイレに消える。
S:89 交番の前、警察の動向。刑事たちが、タバコをすってのんびりしている。大野陽子と、林哲也は緊張して、交番の前を通る。
S:90  職場にて、課長の前。遅刻のいいわけ。
林 哲也  追いかけられたんですよ。
職場の課長  だれに?
林 哲也  それが、その…。男に。
職場の課長  男に追いかけられた!林 哲也、そういう趣味だったのか?
林 哲也  いや、ちがいますよ。
職場の課長  じゃ、どういう趣味だ?
林 哲也  趣味の問題じゃないですよ。男二人に、追いかけられたんですから。命を狙われたんですよ。
職場の課長  (あきれて、まったく信用してない)もうわかった。時間休で処理しとけよ。
林 哲也  …
林哲也は、渋々、自分の机に戻る。
S:91  銀行のコンピュータールーム。
老刑事  機械はわからんな。
若刑事2  当日の交信ファイルはどれですか。
銀行員が、コンピューターをカチャカチャやる。

銀行員  交信記録は、1週間は残るんです。1週間たつと、その上にトレースしてしまいますから、自動的に消えてしまいます。
若刑事2  それで?
銀行員  だから、ラッキーにも、この記録はまだ残っているんです。
若刑事2  (老刑事に)もし、これも消されていたら、手の打ちようがなかったですね。
老刑事   奴らも、そこまでは頭がまわらなかったか。
CRTをみながら
若刑事2  この部分です。本庁でも、調べますから、落としてもらえますか。
銀行員 はい。
銀行員、データーを入れたCDを渡す。
S:92 本庁にて、
若刑事2  この発信元を調べてくれないか?
女刑事  逆探知ができるのは、つながっているときだけよ。
女刑事、CDを機械にかける。CRTに、式が出てくる。
老刑事  これじゃ手がかりにならんのか?
女刑事  でも、ちょっと待って、このジョブには見覚えがあるわ。
女刑事は電話を取る。何か喋るが聞き取れない。電話を肩にしたまま、コンピューター を操作し続ける。
若刑事2  プログラムにも、作った人の特徴があるのかい?
女刑事  普通はわからないわ。ただ、このジョブは珍しいから、チェックしておいたのよ。
女刑事は、電話に応答している。
女刑事  このシステムに関係した人間で、いま、連絡の取れないのは、松井潤一 郎なる人物だけ。○○コーポレーションにいるってうわさだけど、連絡が取れないんだって。
老刑事  ○○コーポレーション! ○○組だな。
若刑事2  ○○組は解散したんじゃないですか?
老刑事   ああ、表向きはな。実は、○○コーポレーションが、○○組だよ。
若刑事2  なんとか、○○コーポレーションへの捜査令状が取れますか?
老刑事  令状は取れるが、そのあとが大変だぞ。とりあえず、ガサ入れしてみるか。まあ、たたきゃ埃の出る連中だからな。

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