ジャンピー     原作・脚本  匠 雅音
01 02 03 04 05 06 07 08 09
10 11 12 13 14 15 16 17


11

S:65 大野陽子のアパートの室内
林 哲也  今日は、別になんでもなかったね。監視なんかされてないよ。
大野陽子  でも変ね、たしかに監視されているわ。
林 哲也  また、あいつらが取り返しに来るかも知れないな。
それはあるかも。
大野陽子  おどかさないでよ。
返せっていったって、私は何も知らないのよ。何を返せばいいのよ。
大野陽子は落ち込む。
林 哲也  ああ、こんな時間だ。もうすぐ、終電だ。帰らなくちゃ。
大野陽子は、林哲也にすがるような目をする。
林 哲也  元気を出して。じゃ、また明日。
林 哲也は、帰る。
S:66 雨のなかを、アパートを見あげている森光太郎がいる。
S:67 暗闇に、黒猫がこちらを見ている。目が光る。黒猫が、そのまま掲示板の黒 猫のポスターへ移り、森光太郎がポスターをナイフで破る。
S:68  翌朝、大野陽子のアパートの前。晴。
大野陽子  あら、林くん。どうしたの?
林 哲也  昨日の話を聞いて、心配になったんですよ。それで迎えに来たんです。
大野陽子  ありがとう。林くんて優しいのね。
二人そろって、クリーニング屋の前を通る。クリーニング屋が、大野陽子を呼び止める。
洗濯屋  大野さん
大野陽子  取りに来るつもりなのに、なかなか8時までに戻れなくて…。
洗濯屋  いや、それはいいだけどね。コートのポケットから、こんな物がでてきたんでよ。必要な物じゃあないかと思ってね。
大野陽子  コートって、あの日に着ていたコート。そういえば、雨で濡れたし、ク リーニングに出したんだわ。


大野陽子は、怪訝な顔をしながら、鍵を受け取る。
S:69  二人で、出勤途中
林 哲也  これは、コインロッカーの鍵じゃないか。
大野陽子  そうね。でも、変ね、何で私のコートにこんな物が入っていたんだろう。私は、こんな鍵、知らないわよ。
林 哲也  わかった。 連中は、これをほしがっていたんだ。これを取り返しに来たんだ。
大野さんが、男と接触したときに、男がこれを大野さんのポケットにい れたんだ。連中が、男を捕まえても、見つけられなかったんで、大野さんを追っか けてたわけだ。
しかし、なんで男を殺したんだろう?
大野陽子  そりゃ、組織を裏切った人間は、殺されるんじゃあない。映画でみたわよ。
林 哲也  そうかやっぱり。すると、相手は暴力団か!やばいな。
大野陽子  でも、どこのコインロッカーかしら。
林 哲也  コインロッカーと言えば、駅じゃないか。
S:70  駅前のコインロッカー。
林 哲也  ここだ。
大野陽子  なんばん?
林 哲也  153番
林 哲也がロッカーを開けて、中のものを大野陽子にわたす。
大野陽子  なに、これ?
大野陽子、茶封筒を開ける


林 哲也  CDか。何がかいてあるのかな? よし、読んで見よう。
大野陽子  林くん、コンピューターが判るの?
林 哲也  こう見えても、理学部ですよ。コンピューターは、まかしておいて下さ い。
大野陽子  へー!
林 哲也  会社のコンピューターじゃダメだろう。ちょっと大学の研究室へ寄って 行きます。
S:71 職場の昼休み、喫茶店にて、
林 哲也  判りましたよ。とんでもないものですよ。
大野陽子  なんだったの?
林 哲也  銀行のコンピューターへ、侵入するソフトです。
大野陽子  それで、どうなるの?
林 哲也  銀行のお金を、外部から操作できるんですよ。連中は、プログラムを完成させたけど、肝心の部分がこのCDにはいっているんですよ。
だから必死で、これを捜しているんです。
大野陽子  ひかれた男が、これを持ち出したのね。
それで私に返せっていっているんだわ。
どうしよう? 林くん。
林 哲也  いまさら、返すといっても、相手がどこにいるから判らないですからね。
大野陽子  それじゃ、また、あの人たちがくるのを待つの?
林 哲也  そういうことになりますね。
大野陽子  冗談じゃないわ!
林 哲也  じゃ、警察に行きますか?
大野陽子  うっ…。
林 哲也  ちょっと、様子を見ましょう。
喫茶店の外に、怪しげな男の影。
林 哲也  でも、簡単に様子はみさせてくれないようですね。
大野陽子  どうしたの?
林哲也は、お金をテーブルの上に置き、喫茶店から出る。
林 哲也  裏から出ましょう。
大野陽子  ねえ、どうしたのよ。
 
S:72 職場に戻りながら、
林 哲也  ちょっと、やばいことになってきたんで、大野さん、1人で動かないで下さい。
仕事が終わったら、迎えにきますから。
大野陽子  わかったわ。仕事が終わっても、ここにいるわ。迎えにきてくれるの、林くん?
林 哲也  ええ。とにかくここにいてください。じゃ、また。
S:73  大野陽子の職場、電話がなる。
電話(森光太郎)  人を殺すってのは、どんな気持ちだ?
大野陽子  誰? あなたは?
電話(森光太郎)  あんたが、人を跳ねて、殺すところを見ていた人間だよ。
大野陽子  ちょっとぶつかった事故ですよ。殺してなんかいません。私の責任ではありませんよ
電話(森光太郎)  事故だから責任がないって。それじゃ、警察はいらんぜ。
大野陽子  接触しただけです。
電話(森光太郎)  おまえが跳ねて、殺したんだからな。また、電話する。

次へ