S:65 |
大野陽子のアパートの室内 |
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林 哲也 |
今日は、別になんでもなかったね。監視なんかされてないよ。 |
大野陽子 |
でも変ね、たしかに監視されているわ。 |
林 哲也 |
また、あいつらが取り返しに来るかも知れないな。
それはあるかも。 |
大野陽子 |
おどかさないでよ。
返せっていったって、私は何も知らないのよ。何を返せばいいのよ。 |
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大野陽子は落ち込む。 |
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林 哲也 |
ああ、こんな時間だ。もうすぐ、終電だ。帰らなくちゃ。 |
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大野陽子は、林哲也にすがるような目をする。 |
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林 哲也 |
元気を出して。じゃ、また明日。 |
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林 哲也は、帰る。 |
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S:66 |
雨のなかを、アパートを見あげている森光太郎がいる。 |
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S:67 |
暗闇に、黒猫がこちらを見ている。目が光る。黒猫が、そのまま掲示板の黒 猫のポスターへ移り、森光太郎がポスターをナイフで破る。 |
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S:68 |
翌朝、大野陽子のアパートの前。晴。 |
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大野陽子 |
あら、林くん。どうしたの? |
林 哲也 |
昨日の話を聞いて、心配になったんですよ。それで迎えに来たんです。 |
大野陽子 |
ありがとう。林くんて優しいのね。 |
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二人そろって、クリーニング屋の前を通る。クリーニング屋が、大野陽子を呼び止める。 |
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洗濯屋 |
大野さん |
大野陽子 |
取りに来るつもりなのに、なかなか8時までに戻れなくて…。 |
洗濯屋 |
いや、それはいいだけどね。コートのポケットから、こんな物がでてきたんでよ。必要な物じゃあないかと思ってね。 |
大野陽子 |
コートって、あの日に着ていたコート。そういえば、雨で濡れたし、ク リーニングに出したんだわ。 |
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大野陽子は、怪訝な顔をしながら、鍵を受け取る。 |
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S:69 |
二人で、出勤途中 |
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林 哲也 |
これは、コインロッカーの鍵じゃないか。 |
大野陽子 |
そうね。でも、変ね、何で私のコートにこんな物が入っていたんだろう。私は、こんな鍵、知らないわよ。 |
林 哲也 |
わかった。 連中は、これをほしがっていたんだ。これを取り返しに来たんだ。
大野さんが、男と接触したときに、男がこれを大野さんのポケットにい れたんだ。連中が、男を捕まえても、見つけられなかったんで、大野さんを追っか
けてたわけだ。
しかし、なんで男を殺したんだろう? |
大野陽子 |
そりゃ、組織を裏切った人間は、殺されるんじゃあない。映画でみたわよ。 |
林 哲也 |
そうかやっぱり。すると、相手は暴力団か!やばいな。 |
大野陽子 |
でも、どこのコインロッカーかしら。 |
林 哲也 |
コインロッカーと言えば、駅じゃないか。 |
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S:70 |
駅前のコインロッカー。 |
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林 哲也 |
ここだ。 |
大野陽子 |
なんばん? |
林 哲也 |
153番 |
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林 哲也がロッカーを開けて、中のものを大野陽子にわたす。 |
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大野陽子 |
なに、これ? |
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大野陽子、茶封筒を開ける |
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林 哲也 |
CDか。何がかいてあるのかな? よし、読んで見よう。 |
大野陽子 |
林くん、コンピューターが判るの? |
林 哲也 |
こう見えても、理学部ですよ。コンピューターは、まかしておいて下さ い。 |
大野陽子 |
へー! |
林 哲也 |
会社のコンピューターじゃダメだろう。ちょっと大学の研究室へ寄って 行きます。 |
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S:71 |
職場の昼休み、喫茶店にて、 |
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林 哲也 |
判りましたよ。とんでもないものですよ。 |
大野陽子 |
なんだったの? |
林 哲也 |
銀行のコンピューターへ、侵入するソフトです。 |
大野陽子 |
それで、どうなるの? |
林 哲也 |
銀行のお金を、外部から操作できるんですよ。連中は、プログラムを完成させたけど、肝心の部分がこのCDにはいっているんですよ。
だから必死で、これを捜しているんです。 |
大野陽子 |
ひかれた男が、これを持ち出したのね。
それで私に返せっていっているんだわ。
どうしよう? 林くん。 |
林 哲也 |
いまさら、返すといっても、相手がどこにいるから判らないですからね。 |
大野陽子 |
それじゃ、また、あの人たちがくるのを待つの? |
林 哲也 |
そういうことになりますね。 |
大野陽子 |
冗談じゃないわ! |
林 哲也 |
じゃ、警察に行きますか? |
大野陽子 |
うっ…。 |
林 哲也 |
ちょっと、様子を見ましょう。 |
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喫茶店の外に、怪しげな男の影。 |
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林 哲也 |
でも、簡単に様子はみさせてくれないようですね。 |
大野陽子 |
どうしたの? |
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林哲也は、お金をテーブルの上に置き、喫茶店から出る。 |
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林 哲也 |
裏から出ましょう。 |
大野陽子 |
ねえ、どうしたのよ。 |
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S:72 |
職場に戻りながら、 |
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林 哲也 |
ちょっと、やばいことになってきたんで、大野さん、1人で動かないで下さい。
仕事が終わったら、迎えにきますから。 |
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大野陽子 |
わかったわ。仕事が終わっても、ここにいるわ。迎えにきてくれるの、林くん? |
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林 哲也 |
ええ。とにかくここにいてください。じゃ、また。 |
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S:73 |
大野陽子の職場、電話がなる。 |
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電話(森光太郎) |
人を殺すってのは、どんな気持ちだ? |
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大野陽子 |
誰? あなたは? |
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電話(森光太郎) |
あんたが、人を跳ねて、殺すところを見ていた人間だよ。 |
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大野陽子 |
ちょっとぶつかった事故ですよ。殺してなんかいません。私の責任ではありませんよ |
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電話(森光太郎) |
事故だから責任がないって。それじゃ、警察はいらんぜ。 |
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大野陽子 |
接触しただけです。 |
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電話(森光太郎) |
おまえが跳ねて、殺したんだからな。また、電話する。 |
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