ジャンピー     原作・脚本  匠 雅音
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S:54 コンピューターのあるマンションの一室。
小松原章  どうだ、何かつかめたか。
西川良太  潤一郎は一人もんですからね。あいつの部屋には何もなかったです。きれいなもんですよ、ほんとうに男の部屋ですかねあれが。
小松原章  轢き逃げした奴だな。そいつが、潤一郎から奪って行ったんだ。轢き逃 げした奴を捜せ。
西川良太  潤一郎の歩く道筋は判りますから、簡単にあたりがつけられましたけれど、跳ねた奴は判らないですよ。それに、轢き逃げかどうかも、まだ判らないんですからね。
小松原章  それを捜すのがおまえの役目だろうが。
西川良太  そりゃ、わかってますけど。
S:55 西川良太は、マンションから外出する。雨。暗い。
S:56  西川良太、現場を望遠する。そこへ、大野陽子の車が止まる。西川良太、ぴんとくる。しばらくして、大野陽子の車が走り出す。
S:57 西川良太が、大野陽子の車を追う。
S:58 西川良太、大野陽子が、アパートへはいるのを確認する。
S:59 大野陽子のアパートの郵便受け。大野陽子は郵便をまとめて取り、部屋へ向かう。
S:60  大野陽子の部屋の中。コーヒーを入れながら、テーブルに座る。郵便を開封 する。その中から、剃刀の刃が出てくる。
S:61 人通りない路上で、大野陽子を呼び止める小松原章・西川良太がいる。

小松原章  おい、あんたかい、あいつをひき殺したってのは。
大野陽子   …
小松原章  あいつがくたばったとき、あいつからかっさらった物があるだろう。それを返して貰いたいんだが。
大野陽子  なんのこと。
西川良太  しらばっくれるなよ。(とすごむ。)
大野陽子  (おびえて)…
小松原章  渡さないんなら…、なんなら警察に行ってもいいんだぜ。
大野陽子  しらないわよ。
西川良太  ふざけるんじゃね。
大野陽子  …
西川良太  裸にして、身体検査をしてもいいんだぜ。(女の体をなめるように見る)
通行人が、4、5人にぎやかにくる。
小松原章  また来るからな。今度は、かならずもらうぜ。
S:62  喫茶店で大野陽子と、林 哲也
大野陽子  電話の男が現れたのよ。
林 哲也  それで、なんて。
大野陽子  なんか判らないけど、男がもっていた物をよこせって。 でも、私には判らないのよ、それがなんだか。取ってももらってもないのよ、なにも。
そいつは、警察に行ってもいいっていうの。
警察に行こうかしら。なんだか恐くなってきた。
林 哲也  でも、あやしいな。警察がこないで何で、変な奴らが来るんだ。大野さんは、本当に轢き逃げなんかしてないよ。男は大野さんの車と接触した後で、誰かに殺されたんだ。
大野陽子  でもどうして、私がつきまとわれるの?
S:63 豪華な部屋に、小松原章と神田啓介が対面している。

神田啓介  できたか?
小松原章  できたことはできた。しかし、まずいことになった。CDを持っ て、潤一郎がふけた。
コンピューターが動かない。
神田啓介  他の奴らはわからんのか。
小松原章  いや、あのCDがないと、走らんのだ。しかも悪ことに、潤一郎が、誰かに殺された。
神田啓介  うーん、そうか。少し荒っぽくなっても、やむえんな。何としても、取 り返すんだな。
S:64 喫茶店で、大野陽子と林哲也。
大野陽子  監視されている気がするのよ。
林 哲也  いつ?
大野陽子  いつでも。アパートも、監視されているわ。家に帰るのが恐いのよ。
林 哲也  ほんと? どうして?
大野陽子は、封筒をだしながら、
大野陽子  それに、こんなものが郵便受けに入っていたわ。
林哲也、封筒を開ける
林 哲也  剃刀! 誰が!
大野陽子  昨日も、アパートのまわりで変な人を見たわ。
林 哲也  誰がこんないたずらを?
大野陽子  それに、魚がみんな死んでしまったし。いままで、こんなことはなかったのに。
へんなことばかり…。
なんか私のまわりに、恐ろしいことが起こりそうで、恐いわ。
1人でいるのが、恐いのよ。
林 哲也  なら、僕が一緒に行ってあげるよ。

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