ドゥマゲテで入院した
熱中症に気がつかなかった   2018.2−記



2日目

ときどき看護婦さんがきて体温や血圧を測っていく。
やはり身体は休息を欲していたようで、眠るのが気持ちよく、知らない間に朝になっていた。
検温と血圧測定は、定期的に続いている。
朝食が運ばれてきた。夕べ、付添者用にでたのと同じパッケージに入っている。


付き添い者用にも同じパッケージに入っていた

 パッケージに入っているのは、ロールパンが2つ、干し肉、ゆで卵、ご飯である。
パンがおいしかったけど、干し肉とは消化が良いのだろうか、とちょっと疑問。ご飯には手をつけなかった。
スプーンやフォークがないと思っていたら、あとでアドミッション・パッケージというバックが届いて、その中に入っていた。
この中には、歯ブラシ、小さなタオル、トイレット・ペーパーなどが入っており、入院セットのようなものだ。

 この頃から次々に人が来る。まずバスルームのゴミを集める人、次にバスルームを掃除する人。これが別の人なのだ。
そして、床に掃除機をかける人。また別人で床をモップで拭く人。ここまでは男性だった。
この人たちは、作業が終わるとサインをしてくれと書類を差し出した。
次に電話機を掃除する女性。ベッドメーキングをする女性。病院服を替える人。
今度の病院服は形こそ同じだったが、サクランボが全面にプリントされている。
そして、弁当の空を引き上げる男性。それぞれの作業が実に細々と分かれている。
人件費が安いせいだろうか。

 9時になると連れ合いが来てくれた。
夕べ来たエリンダ医師の話や、水を飲む許可がでた話をする。
点滴のせいだろうか。体調もだいぶ回復してきた。
体調が悪いときにはおとなしく寝ているが、体調がよくなってくると退屈になる。
ドゥマゲテにはタクシーというものがない。
トライシクルで病院通いをしている連れ合いは、一人でトライシクルに乗るという新鮮な体験をしているようだ。
病院とホテルは近いので10ペソで行くんだけれど、
同じ方向に行く人と相乗りになることもあるという。


    肉と野菜、カップ入りのおかゆとバナナ

ホテルの送迎車はあるが、それはホテルの用事をするためだ。
そこで、街の人たちはトライシクルを使うのだけど、トライシクルとはオートバイの横にリアカーをつけて、屋根をかぶせたようなものだ。

  街中をおびただしい数のトライシクルが走っている。
タクシーのように路上で手を上げれば停まる。そして、バスのように乗り合いもさせるのだ。
リアカー内部には3〜4人がのり、外のベンチにも3人程度は乗るから、7〜8人も乗ることがある。
もちろん乗る前に値段の交渉が必要である。
地元の人は相場を知っているので簡単に決まるが、旅行者にはなかなかに難しい作業になる。

 ベッドの上に横になっているだけだ。ほかに何もすることはない。
食べた量が少ないので、検便をしようにも出ない。
最初は検便だけで、検尿の話はなかったが、やはり検尿もするようにいわれた。
そして、大きなプラスチック製のポットとプラスチックのカップが来た。
なぜか最初の尿は、焦げ茶色だから使わないという。2回目の尿をカップにとる。

 今まで食事は紙製のパッケージに入っていたが、昼食からプラスチックのトレイに盛られてくるようになった。
内容は変わりなく、肉の煮た物と野菜の煮物、ご飯である。


    アドミッション・パッケージと中身

今度はアドミッション・パッケージが届いたので、フォークもスプーンもある。手で食べずに済むようになった。
ただし、これらは使い捨てではなく、自分で洗って何度も使うのだ。
ゆっくりと時間が過ぎていく。連れ合いがコーヒーとペットボトルの差し入れをしてくれる。

はやくも夕食の時間だ。
我が国の病院と違って、夕食は6時過ぎに運ばれてきた。
夕飯を食べたせいだろうか、便意を催してきた。

  人様には見せられない格好をして、カップをお尻に当てて便を取る。
まったく黄色い水のようだ。こぼさないように、すばやく蓋をして、便器の上におく。
看護婦さんに電話すると、すぐに取りに来てくれた。
体温が37.4度でやや微熱がある。
血圧は136ー76で問題ない。いつもは高血圧なのに暖かいところでは、血圧は下がるのだろうか。
脈は60くらい。プラスチックの棒のような容器に入った飲み薬をおいていった。

 今日もテレビではボクシングの中継をやっている。
フィリピン人はバスケットが好きだとは聞いていたが、ボクシングも好きなようだ。
ボクはボクシングをやっていたせいで、ボクシングの中継であれば黙ってみている。
すでに3本目の点滴が終わった。水分が補給されて、徐々に体調が戻っているのがわかる。
点滴で身体がふくれてしまった。
今度は水の取り過ぎだろうか、入院時に腕にはめられたリスト・バンドがきつくなってきた。


    病室の窓から緑が見える

 9時過ぎにエリンダ医師が、助手を連れて回診に来た。
彼女は病名を言わない。しかし、どうやら食中毒ではないようだ。
同じものを食べた連れ合いは何でもないし、吐き気が強く下痢がそれほど酷くはない。
冬の日本から常夏のフィリピンに来て、炎天下を歩いた。
それに寝るときには、ナイトキャップを飲んでいた。
連れ合いは炎天下を歩かずに、ホテルでのんびりしていた。
そして、ナイトキャップもやらない。結論!脱水症状からくる熱中症だ。

 食中毒ではなく、熱中症だとすると、すべてが了解できた。
下痢がそれほど酷くないのも、熱中症だからだろう。
またボクだけがダウンして、連れ合いが元気なのも肯ける。
エリンダ医師と病状について話をする。だいぶ楽にはなった。
彼女は3度目の検便で、細菌がでないことを確認したらしく、ボクを病院から解放してくれるようだ。

 退屈で死にそうだととか、病院は監獄と同じだとか、ボクを自由にしてくれとか、冗談を言って、エリンダ医師と笑う。
明日には退院しても良いと言った。
深刻な病気ではないから、彼女は明るく世間話をして病室をでていった。こうして2晩目も過ぎていった。

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