ドゥマゲテで入院した
熱中症に気がつかなかった   2018.2−記



入院する

  窓の外が明るい。
隣のベッドには連れ合いが寝ているが、こちらがバスルームに通い続けては、おちおち寝ていられない。
何度も吐いているので、病院へ行くように言ってくる。
いままでのアジア旅行で、食あたりによって吐いたり下痢したことはある。
ベトナムのハノイではペットボトルの水であたった。
ハノイから乗った夜行列車の中で、嘔吐と下痢で苦しんだ。
しかし、食あたりなら一度吐いた後、水を飲んでおとなしくしていれば直った。
こんなに何度も吐き続けることは初めてである。飲む水をことごとく戻してしまうのだ。
水をまったく受け付けない。このままいくと脱水症状になってしまう。さすがに弱気になった。
自力回復は無理だと思って、病院へ行くことにする。


体中で毎日が楽しいと言っている

   ホテルのフロントにいって、病院はどこかと尋ねた。すると、下痢しているかと聞いてくる。
下痢していると答えると、彼らもかんたんに了解して、メディカル・センターだという。しかも、車を出すといってくれた。
シリマン大学付属病院らしく、24時間開いているという。
ホテルのハイエースを手配してくれ、それに乗って病院へと向かう。街中をぬけると、病院はすぐ近くにあった。
4階建ての病院は中庭をかこんで、コの字型の建物だった。
道路から見て正面に緊急の入り口がある。ホテルの車はそこへと停まった。
運転してきてくれた男性が、ボクを連れてどんどん奥へ入っていく。
受付で名前を聞かれ、症状を聞かれる。体重や身長を測られて、ベッドに横になるように指示される。
若い女医さんが来て問診され、舌ベロを出せという。舌苔がひどく、舌が真っ白だという。
体温や血圧を測ったりして検査をする。しかし、緊急を要しないと判断されたようだ。
別棟の一般受付へとまわされた。

  一般の受付には、待合席の前にガードマンのような男性が座っている。そこへと列ができている。
30人くらい並んでいるだろうか。地元の人に交じって、大柄な若い白人女性が2人いる。
ここで受診する科を選別されているようだ。ボクもそこに並ぶ。
それほど長い時間もたたずに、ボクの番がきた。
ホテルの男性が受付の人と話して、パソコンの画面をタッチする。すると110号室、5番というカードが出てきた。


小さな街だが立派な教会がある

  110号室の医者は10時に来るから、受付の人が待合席で待っているようにという。
まだ1時間以上あるので、ホテルの人はまた送ってくるから、一度ホテルに戻ろうという。
その言葉に従って、ホテルに戻って横になる。
10時前にフロントに行くと、今度は別の男性が病院に連れて行ってくれる。
この病院のシステムはアメリカ式で、医者が110号室を借りて診察をしているようだ。
110号室ではボクの前には、さっきの大柄な2人の白人女性が診察を受けていた。
彼女たちは渡された薬を、一週間飲み続けるように指示を受けていた。
5番目のボクの診察が始まったのは、11時を過ぎていた。
110号室の医師は、小柄ででっぷりした中年女性だった。彼女は問診をした後、ベッドに寝るようにいう。
そして、聴診器をあて、手でお腹を触る。やはり舌ベロを出せという。
脱水症状がひどいので、点滴をしなければならない。そのためには入院だという。
intravenous と言いながら、手の甲に注射するような仕草を繰り返した。

  えっ、入院だって!
体調は悪いが、薬をもらって帰れると思っていたので、ちょっと驚いた。
点滴をされると動けなくなるから入院を覚悟した。


公設市場の近くを走るトライシクル

   ここでお金の話しをする。現金を持っていないので、カードで支払えるかきく。
すると、彼女へのコンサルタント料金である500ペソは現金で支払って欲しいが、病院への支払いはカードでも良いという。
その場で、500ペソを支払うと、秘書さんが領収書を発行してくれた。
いま病室が空いてないので、とりあえず救急病棟に入院せよという。
110号室から車椅子で移動という指示がでる。
さっき行った救急病棟へと送られる。

  ナース・ステーションのすぐ後ろの病室に入る。救急病棟はまるでテレビのERに出てくるような雰囲気だ。
ただしこの病院は時代がかかっており、建物はだいぶ使い込まれているが。
ベッドに横になると、病院服に着替えるように言われる。
パンツだけになり、上から病院服を着せてもらう。
これが前開きではなく、割烹着のように後ろが空いている。
ぺらぺらの布だが、まったく寒くない。さすがに南国である。
利き腕えはどちらかと聞かれる。右だと答えると、左手の甲から直ちに点滴が開始される。
このあいだに連れ合いが入院手続きをやってくれた。3000ペソの保証金をとられた。

  若い女医さんが病歴を詳しく聞いてくる。


お世話になった病室:左手に水回りがある

ボクの病歴はもちろん、祖父や祖母の死因や家族の病歴、そして信じている宗教まで聞かれた。
58歳の時に脳梗塞をやったというと、飲んでいる薬を聞いてくる。
幸いにも薬の名前をスマホに記録してあったが、ドジなことにカタカナで書いておいた。
当たり前だが、彼女に見せてもわからない。しかし、ボクが読み上げてみると、なんとすべて理解してもらえた。
驚いていると、これらの薬はユニバーサルだから、自分たちも知っているというではないか。
アメリカ資本の世界制覇に驚くばかりである。
この間に白いリスト・バンドが右手首にはめられる。これが入院患者の印らしく、退院時まで外されなかった。

  病室が空いたらしい。
緊急病棟から普通病棟へ、ベッドにのったまま移動である。何となく病人のような気がしてきた。
内科の病棟らしく、4階の個室である。
この病院にも個室と4人の大部屋がある。外国人だからだろう、こちらの希望を聞かずに、無条件で個室を与えられた。
シャワー・トイレ付きで、25平米くらいあるだろうか。
付添用のベッドがある。付添者とはウォッチャーと言うのだそうで、ウォッチャー用に食事もでる。
テレビと冷蔵庫がある。もちろんクーラー付きだ。
病院全体がだいぶ古くなっているので、病室もそれなりに時代がかかっている。
しかし、必要にして充分な設備をそなえており、窓からは緑も見えるし、居心地の良い部屋だった。

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