今日も元気に街へと出ていく。しかし、スプリットは小さな街だ。昨日歩いただけで、めぼしいところは行ってしまった。そこで、市内観光のバスに乗る。
赤い車体のバスで、屋根がない。大型バスだが、乗っているのは我々ともう一組だけだ。若い男性運転手と女性のガイドさんが乗っている。乗客が4人だけと言うこともあってか、じつに気さくな連中である。海岸沿いのバス発着所を出発して、まず、東側の高級住宅地に向かう。そして、南へと向かう。こちらには海水浴場もあり、緑も多く市民たちの憩いの場になっているようだ。
海を下に見る。まだ海水浴のシーズンではないらしく、誰も泳いではいない。東だ南だと言っても、小さなスプリットのこと、ほんのちょっとの距離だ。アドリア海は内海だから波が静かで、夏はさぞ多くの人がでるだろうと思う。ヨットなども多く、うらやましい環境だ。
バスはUターンするようにして、北へと向かう。高層住宅が建ちならび、郊外へ行くと低層住宅が建ちならぶ。どこも同じように見える。しかし、我が国の住宅に比べると、明らかに広いようだ。それは最終日に散歩したザグレブ飛行場の近くの住宅でもよくわかった。
サッカー場が見える。クロアチアはサッカーが盛んらしく、ガイドさんも声を大にしてサッカーを強調していた。そういえば、日本はクロアチアと戦ったことがあったなー、と思い出す。音楽堂や公園などをめぐって、海岸線を西のほうへと向かう。サイクリング道路のようでもあり、この先には運動施設があるという。
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大聖堂の鐘楼上から城壁内を見る |
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メシュトロヴィッチ美術館や彫刻の展示されたカシュテレットの前を通る。カシュテレットはカッコイイ建物で入ってみたかったが、バスは無情にも通りすぎていく。市内からはかなり離れているので、歩いてくるのは難しい。
このあたりは高級住宅街らしい。サッカー選手の家が、4億クーネで売りに出され、ロシア人がかったとか言っていた。海に面して緩い傾斜地が続き、木々の間に大きな家が連続している。ここは半島状になっており、半島一体が緑地化されている。半島の先端には、さまざまなスポーツ施設があり、木の間からテニスコートなどもみえる。
バスはUターンする。来た道を引き返す。自転車とすれ違う。海水浴場が下に見えるところで、バスが停まった。何だろうと思っていると、ガイドさんが下を見ろという。ヌーディスト・ビーチだという。しかし、誰もいない。季節はずれのせいだろう。そういえば、クロアチアはヌーディスト・ビーチで有名なのだとか。
2時間くらいのバスツアーだった。バスは出発点まで戻らず、 Trg Republike 'Prokurative' の前で終わり。城壁の西の端である。城壁と海岸の間は、車の進入が制限されているので、ここで終わりなのだろう。しかし、古い街を維持していくのは大変だ。まず道が細い。人間には良いが、現代の物流には対応できない。観光収入と、市民生活の便利さは、なかなか両立しないようだ。
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大聖堂下でアカペラを歌う男性たち |
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海岸を西のほうへ戻り、小さなレストランに入る。内部の席を希望すると、細い道を隔てた別の部屋に案内される。韓国人カップルらしき先客がいた。アジア人を入れる場所かも知れないなどと考えながら、魚のグリルの注文を入れる。そのうち地元の職人たちが大挙して入ってきた。アジア人を奥の別室へ入れるのは人種差別かもしれないが、職人たちの食欲ぶりを見ることができて非常に面白かった。
最初、6人くらいの男たちが入ってきて、テーブルに座る。ぼそっと言っただけで、注文は終わり。おそらく近くに現場があり、毎日来ているに違いない。店のほうでも慣れたものだ。その後、2人が遅れて入ってきた。近くのテーブルに座り、黙々と食べ始める。パンを手渡したり、職人の昼飯はどこでも同じだ。
決して不味くはない。しかし、改めてTratoria Bajamoht が美味かったことを知る。昼食が終わってから北のほうへと歩くと、映画館やクラブのようなものがあった。中央郵便局の前を通り、美術館に行く。しかし、今日は休み。
城壁のまわりを歩く。城壁の中に戻り、北半分を集中的に歩く。そして、中央の広場にでる。前庭では男性4人のアカペラ・コーラスが行われていた。多くの人が取り囲み、聞き惚れていた。一曲終わる毎に、CDの売り込みがあり、微笑ましい光景が続く。
さて、夕食をどこにしようか。昨日・一昨日と行ったTratoria Bajamoht は美味かった。あの店でも良いが、3日続けるのは能がない。さて、どこにする。宿のオバサンの言葉を思いだした。Trg
Republike 'Prokurative' の西側に美味しい店があるという。行ってみると、満席だという。道路を隔てた店が同じ経営者だという。仕方なしにその店に入る。
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宿の窓からナロドニィ広場を見る |
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するとテラス席の先客は、前の店が開くのを待っているのだとか。もう一組の客は、反対側の店が満席なので、やっぱり待っているのだとかで、ワインだけをテーブルの上に置いている。聞けば、このあたりには美味しい店が3店あり、客はこの店で席が空くのを待つのだそうだ。我々も同じようにワインだけで待つことにする。
5分としないうちに、先客が呼ばれていく。また5分くらいたっただろうか。別の店を待っていたカップルが呼ばれていく。我々もじきに声がかかった。内部はとても複雑で、階段で下るようになっている。良い雰囲気。お金持ちらしき人たちがテーブルを囲んでいる。フレンドリーな態度だが、平均的なサービスである。ムール貝や魚を頼む。昼食を取ったところより美味いが、味は平均的。Tratoria
Bajamoht がいかに美味かったかを知る。
宿に戻ると、部屋の扉の前に、洗濯物がキチンと積んであった。ご多分に漏れず、下着から靴下にまでアイロンがかかっていた。下着にアイロンなどかけなくても良いだろうに、習慣とは恐ろしいものだ。こうした西洋人の習慣が、アジアにももたらされたのだろう。アジアの安宿でも、洗濯を頼むとビシッとアイロン掛けされて返ってくる。
この宿は、ホテルというべきではない。友人のオバサンに頼まれて、たまに客が廻されてくる、そんな感じである。だから客ズレしていない。ところで、この家には妙な絵が掛かっている。玄関を入ったところには、100号くらいの蛇の絵。ベッドの上には女性の肖像画がかかっている。しかし、この肖像画が変なのだ。
女性が斜め横向きというのは、定番の絵柄だが、胸のところに羽根が貼ってあるのだ。20
センチくらいの本物の白い羽根が、キャンバスの上に直接に貼ってある。しかも、頭の上にはコッペパンをのせている。な
かなか良い雰囲気だが、なんとも不思議な絵だ。聞くところによると、息子が画家で、玄関脇の部屋がアトリエだという。
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