翌日は再度、タージマハールに行く。
中庭は見なくてもよかったが、南門と東門に行きたかったのである。
昨日入った西門は、今では最も開けており、ほとんどの人がそこから出入りしている。
壊れかかっている南門は、狭い路地の先にあるが、南面している建物の南の入り口が正面の門のはずである。
しかしそれが最も小さい。
これはタージマハールが、墓であるせいなのかも知れない。
東門から出ると、のどかな田園が拡がり、牛が１０数頭ばかり歩いてきた。
小さな子供が牛飼いで、彼はロバにのって牛を追っていた。
牛はインドの守り神と言われるが、街で見かけるおおくの牛は、どうしたわけか雌ばかりである。
インドでは牛は食用にしないから、自然の摂理に従えば、雄と雌が同数いても良いはずである。
にもかかわらず、雌しか見ないと言うのは、どうしたことなのだろうか。
食堂に入る。テーブルは４つしかないけど、二方に壁が無く開放的な店である。
上はホテルになっているらしい。
美味しいカレーでも、毎食となると飽きる。
しかもインドのカレーは、油が表面に浮かぶほど脂っこい。
暑さのなかで生きていくには、油があって辛いものがあうのだろうが、日本人の僕はうんざりしてきた。
そこで、目玉焼きとロティー、それにラッシー・ヨーグルトを頼む。
店員さんと、雨期が終わったと話をしているうちに、カルカッタで傘を買った話になった。
邪魔だから、いらないのだがと言うと、自分が買うという。
１００ルピーで買って、３０ルピーで売った。
これでいまの食事代がでて、お釣りがきてしまった。
ホテルに戻る。
頼んでいた洗濯物が返ってきた。
きれいにアイロン掛けした洗濯物は、きちんと重ねられ、ビニールの袋に入っていた。
下着までアイロンがかかっている。
ところが変な臭いがする。
死体が筏の上で流れていたあの濁った川の水で洗ったのだろうかと、考えながらそれを着る。
１２時半、昨日のサイクルリキシャのおじさんが、ホテルに迎えに来た。
バス停まで送って貰おうと、頼んでおいたのである。
ホテルの支払いも済ませ、出発。
しかし途中でサイクルリキシャが故障した。
サイクルリキシャのおじさんは慌てることなく、道ばたの修理屋さんにサイクルリキシャを持ち込んだ。
すると、く るまごと交換となった。
別のサイクルリキシャに乗り換える。
バス停に着いたら、１時１５分くらいになってい た。
でも、バスの時間には間がある。
ゆうゆうセーフである。
何しろインドでは、ダイヤより早く出発する可能性もある。
余裕を持って、バス停に来なければな らない。
サイクルリキシャのおじさんは、手をふって帰っていった。
ところが、時間になってもバスが来ない。
２時になっても来ない。
バス停のお兄さんは、悠然としている。
焦ることなく僕を、通りかかった乗り合いタクシーに乗せた。
降ろされたところは、もう１つのバス停だった。
しかし、次のバスは３時半発だという。
まったく怒る気にならない。
座席の指定を受け直し、停まっているバス に乗って、出発まで待つことにする。
バスに乗る子供たちだろう。
アイスクリームを食べている。
美味しそうだが、水道の水はそのまま飲む僕でも、途上国ではアイスクリームは食べない。
アイスクリームでの食当たりは、大事になるからだ。
このバスは面白い室内をしている。
扉は最前部にあるのではなく、前から５メートルくらい後ろへ寄った所にある。
車は左側通行だから、運転席が右にあるのだが、まるで運転席を囲むようにＬ字型にベンチがある。
そして、そのベンチと客席とはガラスで仕切られている。
運転席はもちろんその席には、ガラスを横に引いて入る。
５時間の道中、運転手や車掌以外にも、何人かが入ったり出たりした。
ガラスは透明だから前は見えるのだが、何のためのベンチだか最後まで判らなかった。
バスは途中で一度休憩した。
停まったところは、青空のしたに古びたテーブルが並び、レストランのようである。
３０分の停車というから、カレーとロティーそ してチャイを注文する。
乗客はそれぞれに飲んだり食べたりしている。
しかし、ここにはトイレが見あたらない。
女性客はどうするのだろう。
おそらく彼女たち も男性同様に、近くの原っぱで用を済ませているのだろう。
ジャイプルに着いたのは、９時に近かく、すでに 真っ暗になったいた。
バス停近くの近くのホテルに入る。
ここは近代的な西洋式ホテルで、ドル払いだった。
温かいお湯とバスタブ、きれいなシーツと柔らかいベット。
天国である。
残り少なくなったウイスキーを飲んで、早々と寝る。
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